春の雨が優しく降る3月中旬、写真家・名越啓介が名古屋港に入った。栄エリアから地下鉄で約20分の距離であるにも関わらず、そこに漂う空気はどこか遠くの街の港に着いたような独特な雰囲気がある。大きな外国の貿易船が停泊し、そこに車を次々と運び入れる「ギャング」と呼ばれる男たちの、静かな熱気が広がる岸壁の脇に、カラフルな「LEGO LAND」がたくさんの家族の笑顔が集まる日をじっと待っている。
一方、港の仕事に従事する人々が暮らす『築地口』は昔から営業を続ける居酒屋が今もいくつか営業を続けており、連夜、地元民のあたたかい交流の場に。相反する要素が一つの空間に違和感なく収まる不思議な街・名古屋港。そんな港を、名越啓介の視点で切り取っていく。
「LEGO LAND」のすぐ脇に停泊する大型船舶に潜入
日本一の貿易港を支える、力強く優しい男たちの姿を追った
港で働く人々を支える街『築地口』
古くから続く飲食店も多いこの街は、どこか懐かしい雰囲気がある
名古屋港と築地口/明治40(1907)年、名古屋の発展に大きく貢献する国際港『名古屋港』が誕生。隣接する街『築地口』は、昼夜となく働く人で溢れ、異国情緒あふれる空気を漂わせていた。しかし、1965年頃から海上コンテナの波が一気に押し寄せ、物流の中心的な機能を担ってきた3つのふ頭(現在のガーデンふ頭、水族館あたり)では、船舶の大型化に対応することができず、沖合にコンテナふ頭の整備を開始。物流の拠点を沖合に移していった。以来ふ頭の拡大を繰り返しながら、現在の名古屋港は日本一の貿易港にまで発展している。