2017.4.26

名古屋出身モデル・長澤メイが今もずっと大須に通い続ける理由。

ファッションモデル 長澤メイさん

TEXT:TAKATOSHI TAKEBE(LIVERARY/THISIS(NOT)MAGAZINE) / PHOTO:KAZUHIRO TSUSHIMA(TONETONE PHOTOGRAPH)

名古屋市の中心街・栄から徒歩圏内に広がる「大須商店街」。ここは新旧の文化が溢れかえり、平日と言えども日中は人通りが多く賑やかしいスポットです。そんな大須商店街が「大好き!」と元気よく言い放つのは、ファッションモデルの長澤メイさん。一体、どんなお店を案内してくれるのでしょう?

地下鉄・鶴舞線で大須観音駅で降りて、大須観音の境内を通過して商店街へ…というコースが大須へ遊びに行く際の定番ルート。大須観音は外国からの観光客~デートの待ち合わせをする若者たちで今日も賑わっています。

「ハトが苦手なんですよね~(笑)」と長澤さん。ちょっと顔がひきつっています。
  • 足早にお参りを済ませ、いざ大須商店街へ!

さぼてん洋品店

「可愛くて、とにかく安い!」行きつけの古着屋さんで宝探し。

「名古屋に住んでいた当時、特に高校生時代は足繁く通っていました。今でも名古屋や関西で仕事が入ると、必ず帰りに寄っちゃうんです」。東京の第一線でファッションモデルとして活躍する彼女が、未だに愛してやまない街・大須で必ず行くというお店の一つが『さぼてん洋品店』。昨年、店内を改装OPENした同店は、実は創業20年以上の老舗なのだそう。

リニューアルして一新した『さぼてん洋品店』から買い物スタート!

東京でも仕事中に1、2時間の空き時間ができると、ついつい古着屋へと足が向いてしまうほど買い物が大好きな長澤さんがこの店をオススメする理由は「可愛くて、とにかく安い!」と実にシンプル。

「高校生の時にこの店で買った1000円のジーンズ。未だにコーディネートに取り入れて全然履いているんですよ」と長澤さんが太鼓判を押すこのお店、安いからと言ってモノが良くないというわけではなさそうです。
むしろ、東京と比べても引けを取らないのだと長澤さん。「東京の古着屋さんってムダに高いイメージで。ほんとにココに来ると何でも安くて安心して買い物できるんです。宝探しみたいで楽しいんです」と言いながら、くまなく店内を探し回っていました。ちょっと取材中ってことを忘れているのかも?と思うくらいに買い物に夢中になる姿は、高校生時代から何も変わっていなようです。

『さぼてん洋品店』から『KOMEHYO』へ

『さぼてん洋品店』から『KOMEHYO』へ。通りを歩いていると、食器屋さんの前にワンちゃんが。「かわいい~!」とついつい寄り道。さらに、この道の先にはなんと大きな亀もいました…。大須のストリートではさまざまな出会いがあるようです。

KOMEHYO

長澤メイ、御用達。人と差をつけるアイテムはココで!

「次も気合を入れていきます!」と長澤さんが意気揚々と宝探しに向かった先は『KOMEHYO名古屋本店』。
大須にドーン!と巨大なビルを構える『KOMEHYO』は、現在大須エリアだけで4店舗、関東~九州まで支店を展開するまでになったリユースデパート。長澤さんが向かったのは4Fレディースフロア。「いつもこのあたりの棚から見ていって、そのあとはあっちのコーナーへ…」すでにフロアの配置を熟知しているところはさすが!「あ~まだこのバッグ残ってる!もう少し待って値下げした時にゲットしよう〜っと」意外と財布の紐が固い彼女。次々と商品棚をチェックしていきます。

「こういうところに掘り出し物があるんですよね~」

撮影時のスタイリングもほとんどの場合、スタイリストなしで自分の私服コーディネートで現場に入るという長澤さん。そんな彼女が「KOMEHYO、大好き!」を宣言するには理由がありました。「ファッションブランドって一時的な流行があって、人と被りやすいじゃないですか。でも、KOMEHYOで探していると、これは!っていうものが出てくるんですよね。

かわいいものは何年前のものでもかわいいし、逆に今見たら新鮮だったりする。人と被りたくないから、そんな時のKOMEHYOなんです!」長澤さんの個性的なファッションスタイルを支えているのは、実はKOMEHYOだった!?その独自のファッションセンスはもちろん、こういった発言も多くの若者に支持される彼女の魅力と言えるでしょう。

『KOMEHYO』から寄り道をしながら移動

『KOMEHYO』から寄り道をしながら移動。通りを歩いているだけで、お祭でもないのに出店屋台が並んでいたり、テイクアウト専門の店も多い大須商店街はいつも賑やか。長澤さんは「ここへ来ると元気になる」と言います。食べ歩きしながらフラフラできるのもこのまちの楽しみ方のひとつ!ということで、大須名物・タピオカドリンクを飲みつつ、ピンクの富士山がそびえ立つ通称・富士山公園でふらふら散歩しながら、次の目的地へと向かいます。富士山の形状をした巨大な滑り台(?)は、国内の珍スポットを紹介する雑誌『ワンダーJAPAN』の表紙になった場所でもあるんです。

  • 富士山の形状をした巨大な滑り台(?)は、国内の珍スポットを紹介する雑誌『ワンダーJAPAN』の表紙になった場所でもあるんです。

witch

いつもの自分に特別感をプラスする、魅惑のヴィンテージクローズ。

商店街のアーケードを抜けて、矢場町方面へ。大きな交差点付近のビルの2階にひっそりと構える『witch』。階段を上がって、ドアを開けた瞬間「かわい〜!」と歓声が。一気にテンションがあがる長澤さん。ここまで巡ってきた古着店とはちょっと違う独特の雰囲気に包まれたこちらのお店は、ヴィンテージ品を取り扱うセレクトショップ。

「最近ハマっているトイカメラを入れるバッグを探していて……。これ、かなり気になる~」

店内にはカラフルな柄ものからシンプルだけど形がおもしろいものなど個性的な商品が揃う。中には、1900年代のものもあるというから驚き。「違う時代の服を今、自分が手にとって、当時はどんな人がこの服を着ていたのかなって、その時代のことを想像するのも楽しいですよね」と語るのは、買付けも自ら行っているというオーナーの三宅真由美さん。店内を覆う独特の雰囲気を作り出すのは、ひとつひとつのアイテムがどれも長い年月を越えた存在感たっぷりの服たちだからかもしれません。

「チープな古着も好きだけど、こういうお店で買ったアイテムを取り入れて一点豪華主義にしています。ほんの少し、いつもより贅沢な買い物をしてみるのもいいのかもしれない、そんな風に思わせてくれるそんなお店です」と長澤さん。シンプルなコーディネートにひとつ加えるだけでも、ぐっと特別感を増してくれる説得力を持つヴィンテージクローズの世界。「witch(=魔女)」と名付けられたこの店の持つ魔法にかかってみるのも悪くないはず。

途中で老舗喫茶店で休憩

途中で老舗喫茶店で休憩。たくさんの人でごった返す、大須。「ちょっと疲れたな~」と思ったら喫茶店へイン。これは名古屋人ならでは定番ルートかもしれません。おしゃれなカフェもいいけど、やっぱり落ち着くのは古くから続く純喫茶。ほっと一息ついて、本日の最終目的地へ。

にこみのたから

長澤メイ認定、名古屋No.1味噌煮込みでシメ!

長澤さんがまだ幼い頃から、母親に連れてきてもらっていたという思い出深い場所。それが、大須の味噌煮込みうどん専門店『たから』。
「ここの大将、すっごくチャーミングなんですよ」と長澤さん。厨房の奥から噂の大将が登場。「あんな小さかった女の子がこんなにもキレイになって、モデルさんになるなんてね〜!」と満面の笑みでお出迎え。

久々の再会を親子のように喜ぶ二人。本当に仲良しです。

「ここの味噌煮込みを食べたら他のは食べれないくらいおいし〜んです!」そんな長澤さんが言うとおり、たしかにおいしい。味噌が辛すぎずまろやかで、どこか家庭的な味がやさしい……。取材日当日も長蛇の列ができる人気っぷりに大将は「いやいや、たまたまですよ〜」と謙遜する。大将曰く「昭和40〜50年代はシャッター街だった」のだそう。現在は約1200もの店や施設がひしめき合っている大須商店街にそんな過去が。まちの変化も見つめながら、しっかりとこの場所に存在し続けてきた証、それがこのおいしい味噌煮込みうどん。大将の貴重なお話と一緒に、ぐぐっとスープまで飲み干した長澤さん。「ごちそうさま!おじさん、元気でね。次は友達連れてくるからね〜!」

  • フタに乗せてうどんを冷ましながら食べるのが通の食べ方なんです。
「またすぐにでも来たいくらいです!大須熱、高まりました~」

若者で賑わう古着屋、マニアックなレコード店、電気街にメイド喫茶、かと思えばブラジル人がチキンの丸焼きを売っていたり!そんな自由奔放なまち、大須。あれ、もしかしたら全国的にも見ても、こんなに活きが良い商店街は珍しいのかも…。固定観念にとらわれない、長澤さんの自由奔放なスタイルを心の内側から支えてくれているのは、10代の頃から通い続けるこの大須というまちの存在が大きいのかもしれません。

PROFILE

案内人MEI NAGASAWA(ASOBISYSTEM)

愛知県出身の名古屋をこよなく愛するファッションモデル。2014年サロンモデルアワードJAPAN優勝。ファッションやビューティ、雑誌やSNSなど、ジャンルやメディアの垣根を超えて活動するit girl。また、最近では活動範囲も日本のみならず世界へと展開。つくられた存在のモデルではなく、セルフプロデュースにも長け、読者やユーザーにとってリアルなお手本となる。今、彼女のセレクトするモノ、コトに女性からメディアまで注目が集まる。

ライターTakatoshi Takebe

フリーのエディター/ライター/デザイナー。1983年生まれ。岐阜市出身。これまでさまざまな編集プロダクション/出版社に勤務し編集ノウハウを学び、本業と並行して自主制作雑誌「THISIS(NOT)MAGAZINE」の企画制作/発行、イベント企画制作などを行ってきた。2013年11月より名古屋エリアを中心としたカルチャートピックスを発信/提案するWEBMAGAZINE「LIVERARY」を仲間たちとともに始動。同誌の企画/編集/ライティング/イベント制作などを担当。また「コロカル」(マガジンハウス)など他媒体でも執筆中。

カメラマンKazuhiro Tsushima

TONETONE PHOTOGRAPH 代表。愛知県出身。ファッション、雑誌、アートZINE制作など、アンダーグラウンドでたきにわたって活動中。名古屋の凝り固まった古い考えをぶち壊したいという思いで日々奮闘中。暇さえあればゲームか買い物。フィルムを使った撮影が得意。