2018.3.30

名古屋市国際交流員が伝えたい名古屋の楽しみ方:ライブハウス編

名古屋市観光文化交流局観光交流部国際交流課 
国際交流員

カイル・セラ

TEXT : KYLE SERRA / PHOTO : TOMOYA MIURA

子供の頃から音楽に興味を持っていて、日本でしか公演のないアーティストを生で見ることが一つの小さな夢でした。初来日した時から現在まで、日本で数え切れないほどライブに行くことができました。この名古屋の地で私の夢が叶ったのです。

名古屋に住み始めてから覚えた言葉に「名古屋飛ばし」があります。ご存知かと思いますが、特に海外のバンドは東京・大阪公演を終えるとすぐ帰国し、「ジャパンツアー」と言いながら日程を見ると東京、大阪、京都、広島、福岡、札幌…何度見返しても「名古屋」という地名が見つからない。バブル全盛期にマイケル・ジャクソンやマドンナが名古屋を「飛ばして」公演を行ったことから生まれた名古屋独特の「文化」だと言われています。つい先日も、私の好きなアメリカのインディーズバンドの来日公演で「東京、川崎、静岡、浜松、鈴鹿、神戸」という非常に残酷な名古屋飛ばしを経験したばかりです。

しかし、実は名古屋にはいいライブハウスが数多くあり、国内外のアーティストがたくさん来て演奏を行っています。音楽好きな人が素敵なライブに行くチャンスは名古屋でも毎週のようにあります。名古屋は「City of Dreams」であると同時に、「City of Music」とも言えるのです。

それでは、お勧めのライブハウスを三か所ご紹介します。(※順不同)

[クラブクアトロ / 矢場町]

名古屋のど真ん中
国内外の人気アーティストが集まるライブハウス

名古屋パルコの東館8階にあり、キャパ550人ほどの「中箱」ライブハウスで、海外で人気の高い若手アーティストの初来日ツアーなどでよく使われます。知名度の高いバンドが多いため、時間をたっぷりとったワンマンライブが頻繁にあります。交通の便もよく、音響も優れていて、私が名古屋、もっと言えば世界で一番よく通っているライブハウスです。

このライブハウスについてはひとつ思い出されるエピソードがあります。名前に「クラブ」が入っているために、高校留学時代のホストマザーがとても心配して「クラブは大人が遊ぶ場所で、高校生が行くべきところではない」とライブに行くことを止められたので、翌日クラブクアトロに電話をかけてお店の人からライブハウスであることを説明してもらい、私はライブに行くことができました。心配してくれてありがとう、ホストマザー!!
ライブの開演より早めに着いたら、掲示されているチラシを見たり、同ビルの7階にあるタワーレコードで今後来るバンドの音楽を試聴したりできるのもポイントです。

ここで見たバンドベスト3

ZAZEN BOYS [日本]
ナンバーガールという代表的な邦オルタナティヴ・ロックバンドが2002年に突然解散した後に立ち上がった、ジャンルを簡単に言い表せないロックバンドです。アルバムごとにマス・ロックやプログレッシブ・ロックから非常にファンキーなエレクトロニカにラップまで及ぶ存在です。名古屋で演奏する時はほとんどクアトロに立ち寄り、数え切れないほど見に行きました。どんなに見ても飽きないZAZENの独特の雰囲気についハマります。初めて見た時は偶然DVD録画されました。2008年12月25日のライブDVD「ZAZEN BOYS LIVE AT NAGOYA」に私は数秒映っています。会場限定販売のDVDですが、持っている方はぜひ探してみてください(笑)

Toro y Moi [アメリカ]
Chazwick Bundickというグラフィック・デザイナーの音楽プロジェクト。2010年のデビューから「チルウェーヴ」というリラックスしたシンセ・ポップのジャンルに決め付けられてから、サイケデリック・ロック、ハウス、R&Bなど、多数の音まで試みている。アルバムのジャケットやPVも本人が手掛ける天才のアーティスト。ライブの時はギター、キーボード、ヴォーカルでChazの世界観をたっぷり味わえます。基本はパソコンの前でひたする作曲しているイメージしたが、演奏のほとんどはギターを弾いていた。弾き方も見た目もじみジミ・ヘンドリックスにそっくりでした。

James Blake [イギリス]
イギリスの小箱クラブで流れるエキスペリメンタル・ダブステップを制作して数年後にグラミー賞にノミネートされて、ビヨンセのアルバムをプロデューサーやゲストヴォーカルとして参加してきた若くて才能のあるアーティスト。ライブの時は彼の顔つきから絶対に分からないソウルフルな太い声とピアノやシンセを同時に操作し、目の前でアルバムでも聞けない音を生み出す。クアトロの身近な音響でJamesの細かな音をしっかりと聴けて良かったです。

[ダイアモンドホール・アポロベース / 新栄]

金剛石(ダイアモンド)の如く輝く名古屋の隠れたライブハウス。

新栄町駅から歩いて数分、広小路通り沿いにある雲竜フレックスビル西館に、この隠れたライブハウスがあります。ダイアモンドホールはキャパ1000人ほどの「中箱」ライブハウス。クアトロに比べて海外バンドの出演は少ないですが、観客数が「クアトロ以上・ZEPP名古屋未満」の場合はだいたいダイアモンドホールになります。会場が広いのでステージ付近以外は通常混んでいません。スピーカーからは爆音が鳴り響きますので、近づきすぎには注意を。

同じダイアモンドホールでは、ライブ以外にも大日本プロレス(ビッグ・ジャパン・レスリング)の試合も行われるので、「プロレスは見たことない」というあなたにもオススメです!あらかじめ警告しておくと、大日本プロレスは極めて暴力的なパフォーマンスなので気を付けてくださいね…。

  • このエントランスを奥に進み5階まで上がればダイアモンドホール。外から覗いても分からないですが、会場は意外と広い!
  • ダイアモンドホールから歩いてすぐの姉妹店。ダイアモンドホールより狭くて、身近なライブを楽しめます。将来が楽しみなこれから見込みのあるバンドもたくさん出ています。

Club Rock 'n' Rollという狭いが質のいいライブハウスもここから歩いて3分程度のところにありますので、ぜひそちらもリストに加えてください。

ここで見たバンドベスト3

MGMT [アメリカ]
同世代の大学生は必ず何百回も聴いたと言っても過言ではない「Electric Feel」「Time to Pretend」「Kids」という曲を一斉にリリースしたアメリカ人2人組。2008年のデビュー後に大注目されてから、自らの明るいシンセ・ポップを離して、ギターを中心したサイケデリック・ロックに集中し始めました。私が観た時は、想像と違いサポートメンバー3人と一緒に演奏し、初期の曲は一切やりませんでした。ダイアモンドホールの広いステージでは、バンド映像にサイケデリックの模様を重ねた合わせたVJがとても印象的でした。

MELT BANANA [日本]
もしあなたがこのバンドの音を知らずに見に行ったら、5分で会場を出たくなるかもしれない日本のノイズロック・グラインドコアのバンドです。日本より海外で有名だと言える逆輸入型バンドは、20年以上ノイズ(フィードバックなどの雑音)を使った極めて速い、爆発のような曲を作り出しています。最近のアルバムは過去よりポップな要素を取り入れていますが、決してラジオで流れないサウンドと言えます。ステージではヴォーカルのYakoがMIDIのリモコンを振りながらスピーカーからとんでもない音が出します。私が観たライブも、エネルギーで溢れていて、とても楽しい時間を過ごしました。普段と変わった音を求めている方は一度見に行ってみてください。

LMFAO [アメリカ]
「PARTY」をテーマしたエレクトロ・ハウスのグループ。現在でも日本のクラブやイベントで必ず流れる「Shots」と「Party Rock Anthem」という曲を生んだ2人です。どこか流れる度に「またこの曲か…」を思ってしまうほどのよく使われる曲ですが、ライブで見ると、やっぱり楽しい!!会場の全員が一緒に盛り上がって踊る姿は日本で珍しい風景ですが、ダイアモンドホールはまさにPARTYでした。売れてから急に活動休止したグループで、ここ名古屋のダイアモンドホールで見られたことはとても貴重な体験でした。

[CLUB UPSET / 池下]

小規模の会場で衝撃的な爆音が待っています!

池下駅の1番出口から約200メートル、AOKI’Sピザと三喜神社を通りすぎるとCLUB UPSETの入口が待っています。会場が5階にあり、混んでいる時は上の方からこもった音楽の音とはぁはぁと息を切らせながら階段を上るお客さんの声が混ざり合って聞こえてきます。

UPSETはキャパ250名の「小箱」ライブハウスで、中に入るととにかく暗くて狭い。人が多い時などは扉を開けでも入るところがないほど!しかしその理由はUPSETの「箱」としての小ささにもかかわらず、国内外の優れたバンドがよくここでライブをするからです。メジャーデビューこそしていないものの人気の高いバンドが多く、東京の公演が完売だったために、わざわざ名古屋まで来たという人にも何度か会いました。少し前まではメタル、ハードコア、パンクのライブが圧倒的に多かったのですが、最近の公演スケジュールを見てみると、ジャズやアイドルグループなども載っていました。時代も変わったのですね…。

  • 階段が大変!ライブ公演日は地上から5階まで登る試練がUPSETで待っています。階ごとに励みのメッセージがさりげなく張ってあります。4階はSOON! あとちょっとだって!!
  • 外から見たUPSETの入口。人気のバンドが出るとみんなが路上で待機します。

ここで見たバンドベスト3

Deafheaven [アメリカ]
サン・フランシスコ出身でブラックメタル、ポストメタル、シューゲイザーを混ぜ合わせた新しいサウンドを作り出す4人組。ジャンルを定義することが難しく、色々な音楽領域からファンを魅力するロックバンドです。2013年の「Sunbather」というアルバムが多数のネットや雑誌の年間最優秀アルバムリストに載り、その評価は私も同感です!メタルバンドなのにヴォーカルの動きも格好も、QUEENのフレディ・マーキュリーに多大なる影響を受けていることに気付き、思わず笑ってしまいました。日本で見る機会がとても少なく、少人数で爆音ライブを見られたことに、UPSETに感謝しています。

BORIS [日本]
MELT-BANANAと同じく、日本より海外で注目度が高い日本のバンド。ロックの中でも様々な音で実験して、アルバムごとに同じバンドと思えない幅広いディスコグラフィー(60枚以上!)を誇る伝説的なスリーピースバンドです。名古屋で見たライブは2005年、スラッジ・メタルやシューゲイザーの傑作「PINK」の再発ツアーでした。BORISのアルバムの中でもっとも好きな一枚で、生で見る機会はないとずっと思っていました。UPSETでは18分間もの大作もしっかり聴かせてくれたことがとても嬉しかったです!

ALCEST [フランス]
数多くの楽器を演奏できるフランス人のネージュが子供の頃に経験した「おとぎの国」をコンセプトにしたブラックメタルのプロジェクト。時に美しく、時に激しく空想世界に導くロックバンドです。歌詞はフランス語なのでライブを見た時、意味がわからず、見終わってすぐにインターネットで調べました。ネージュがとても日本好きということで、最新アルバムは「木霊」という名前で「もののけ姫」をモチーフにした作品だそうです。これぞ国際交流ですね。

いかがでしたか? 名古屋にはほかにも魅力的で個性的なライブハウスがたくさんあります。ここでは3つしか挙げていませんが、今後また機会があればぜひそのほかのライブハウスもご紹介したいと思います。

では最後にライブを楽しむためのポイントを紹介したいと思います。

  1. ① ライブはほとんど2ヶ月後まで予定が決まっているため、好きなバンドを見逃さないように、ウェブページは最低でも月1回はチェックした方が安全です!
  2. ② できればネットやコンビニで前売り券を買うことをお勧めします。当日券より500円程安く買えて、完売の心配もありません。人気のバンドであればチケット発売日当日に買っておかないとすぐに売り切れてしまいますよ!
  3. ③ グッズを買うベストなタイミングはライブが終わる直前。公演が始まる前に品ぞろえを把握して、最後の曲が終わった瞬間にグッズ売り場へ行けば並ばずに購入できるし、帰りも便利です。ただし、グッズが完売してしまうこともあり得ますのでご注意くださいね。

I hope you enjoyed this short article about some of my live music experiences in Nagoya. I encourage you to go out and enjoy the many concert options Nagoya has to offer you. Have fun!

※この記事は、個人的な意見としてまとめています

PROFILE

名古屋市観光文化交流局観光交流部
国際交流課 国際交流員

Kyle Serra

2013年から外国青年招致事業(JETプログラム)を通して名古屋市の国際交流課にて翻訳・通訳・地域の多文化共生などで活躍。小学校の頃に邦楽と出会ってから日本語を勉強し始める。高校・大学頃に名古屋で交換留学。1991年ニューヨーク州生まれ。